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新型コロナウイルス感染症COVID-19

 

英名: Novel Coronavirus Disease 2019

病原体: SARS-CoV-2

原産地・生態:  ヒトの感染症.2019年末に中国武漢市周辺から分布拡大.野生脊椎動物に感染するウイルスがヒトへの感染能力を獲得したと考えられている.

 

情報源

厚生労働省:  新型コロナウイルス感染症についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

 

 

 

2022712日時点

 

将来予測

これらの予測はひとつの方法によるものであって誤差を含み,今後の感染拡大防止策などにより変化すると考えられる.また季節性や人工的な免疫は考慮されていない.感染者数はこれまでのサンプリング方法による報告数であり実際の数ではない.

 

回復

 

 

 

 

 

対策による極低密度化 < 1人)

地域のなかの感染者(infected)が1人未満(現在の調査努力量)になる時点.緑青が濃いほど早く達成されると予想された.白い部分は20231月以降.赤い部分は50%以上の確率で増加(増加率の対数で着色).

vaccination普及や感染の進行,社会的対策等により感染者の極低密度化に成功する時期(必ずしも根絶ではない). 2022627日を基準日とし、基準日と2022718日の積算感染者数をもとにsource_sink.pdfの方法で推定したパラメーターにより予測した.基準日以前4週間以内に発見された感染者は基準日においてinfectedであると仮定している.季節性は考慮せず,人工的な免疫獲得者や既感染者の人口からの控除は行っていない.なお地域間移動は2020715日から2021329日までは指数関数を,それ以外は重力モデルを仮定している.計算の収束はやや遅かった.

 

 

予測される達成時期(中央値).赤文字の地域では減少せず増加する可能性が50%以上である.予測期間中の季節や人工的な免疫などの変化は考慮されていない.

 

極低密度化<1名)

 

 

 

 

都道府県

予測

都道府県

予測

都道府県

予測

鳥取県

20231月以降

青森県

20231月以降

山梨県

20231月以降

島根県

20231月以降

奈良県

20231月以降

宮城県

20231月以降

高知県

20231月以降

長崎県

20231月以降

京都府

20231月以降

徳島県

20231月以降

愛媛県

20231月以降

広島県

20231月以降

新潟県

20231月以降

山口県

20231月以降

茨城県

20231月以降

佐賀県

20231月以降

滋賀県

20231月以降

岐阜県

20231月以降

富山県

20231月以降

沖縄県

20231月以降

福岡県

20231月以降

和歌山県

20231月以降

鹿児島県

20231月以降

北海道

20231月以降

香川県

20231月以降

熊本県

20231月以降

兵庫県

20231月以降

秋田県

20231月以降

三重県

20231月以降

千葉県

20231月以降

長野県

20231月以降

福島県

20231月以降

埼玉県

20231月以降

宮崎県

20231月以降

岡山県

20231月以降

愛知県

20231月以降

山形県

20231月以降

群馬県

20231月以降

大阪府

20231月以降

静岡県

20231月以降

栃木県

20231月以降

神奈川県

20231月以降

大分県

20231月以降

福井県

20231月以降

東京都

20231月以降

岩手県

20231月以降

石川県

20231月以降

 

 

 

過去の予測はこちら

 

第1ピークが終わり再拡大が開始する直前のページ 202072

 

第5ピークが終わり減少が進んだ時期のページ 2021928

 

概 況

 

1. 増減の位相の地域差は大きいが,全体としてみると2022620日の計算を底にして増加率の大幅な上昇が続いている(第9ピーク,第7波).全47都道府県のうち36都道府県で導入された場合に感染者が増加する可能性がある(週あたり増加率>1.0である可能性が50%以上).
 なお2022124日(第6ピーク,第6波)以降の増加率は大きな傾向として低下傾向にあったが,その中で小規模な増減が繰り返された.2022328日の計算を底にして増加率が上昇し(第7ピーク),2022425日をピークとしてゆるやかに低下した.その後は2022523日および30日の計算でやや上昇した(第8ピーク).連休による変動や地方で減少が遅かった現象が反映された可能性もある.

   これまでの大きな傾向としては,20204月のピーク(第1ピーク,第1波)のあと減少し,7月には再び感染が急拡大したが(第2ピーク,第2波),8月以降は全国として減少した.929日の計算から反転して拡大し(第3ピーク,第3波),20211月中旬の計算から減少した.202137日の計算から反転して増加期に入り(第4ピーク,第4波),420日の計算をピークとして増加率が低下してきた.202175日の計算から増加に転じた(第5ピーク,第5波).2021816日の計算をピークとして減少し,1018日の計算以降はほぼ一定の比率で減少し,20211019日と26日に週あたり増加率(1.0より小さいため感染者は減少)が最低となった.その後2021111日の計算から増加率が上昇し2022124日の計算でピークとなった(第6ピーク,第6波). 2020年春以来の現象として2022110日から2022124日の計算まで地域間の移動が検出されたがその後は消失した.

2.新たに分布拡大をはじめたOmicron株の週あたり増加率はDelta株より大きいとの情報があり,重症化リスクは低いとのことだが,これまで散発的な感染のみであった地方の農村で蔓延する可能性もある.

3.20218月下旬において感染拡大初期に相当するニュージーランドやオーストラリアでは厳しい社会抑制の下で増加がみられたのに対して,すでに感染のピークを何回か経験した日本で抑制傾向にあった理由は不明.世代あたり増加率R0vaccinationの普及比率および積算感染者数から単純に予測するより強く抑制されていた.とても感染が起きやすい場所で感染が一巡したか,あるいはそのような場所での集中的なvaccinationが機能したか(イメージの説明susceptibility.pdf).
 また20208月に減少した理由も不明.皆の自粛による社会的抑制か,とても高密度で感染が起きやすい場所では感染が一巡して局地的に集団免疫が形成されたか(
イメージの説明susceptibility.pdf),あるいはそのような場所での局地的な対策が機能したか,梅雨明け後の気候によるのか. 

4.人口密度が高い都道府県が感染のソース(供給地,下図の赤色)となり,人口密度が低い都道府県ではシンク(導入により散発的に発生するが維持されない地域,下図の青色)となる可能性がある(source_sink.pdf).一般的にソース地域での集中的な対策がシンク地域にとっての対策にもなる.

 外来生物の地理分布では,分布の中心で外来生物や感染者の密度が高く,周辺で密度が低いパターンが見られることが多い(下図).このような類似した地理分布は2つのメカニズムで出現する.ひとつは活発な増殖と拡散の一時点であり(下図左),もうひとつはソース・シンク構造である(下図右).

 対策として下図左では全域でのR0低下と分布拡大の先端でのemergency controlが行われるが,下図右ではソース地域に集中したR0低下対策で個体群全体が根絶されることもある.

 ただし増殖しやすい変異の出現により潜在的なソース地域が拡大する可能性がある.

 

 

 

望ましいこと

 

1.これまでのvaccinationOmicron株が普及した状況下での高リスク者や後遺症のリスク評価と,その一般市民との共有(リスクコミュニケーション)が望ましい.

 

2.一般的に高い人口密度は急激な感染拡大をもたらす可能性があるため,長期的には地方に分散して居住し,都市に人口が集中しない社会をつくることが望ましい.神奈川県居住者と比較した東京都居住者の感染リスクのオッズ比はおよそ1.8程度であった.

 COVID-19での人口と感染者数の関係(両対数目盛).より正確には人口の代わりに平均混み合い度(自分の周囲の人数を全員で平均する)を用いることが望ましい.人口が多い都道府県では人口当たりの感染者数が多い傾向がありそうだ.

回帰曲線: (感染者数)=10-4.0×(人口千人)1.4

 なお飛火的な分布の可能性がある地域(高知,和歌山,新潟)を除いたreduced major axis法では (感染者数)=10-6.4×(人口千人)2.1であり人口が10倍になると感染者は100倍になる.

 

3.新興感染症の可能性も想定した野生動物との望ましい共存関係を考えることが望ましい.

 

4.国際的にbiosecurityを遵守する状況を作ることが望ましい(認証制度など).

 

5.再拡大した場合は,ソース地域となっている大都市圏の人口密集地で集中的な対策をとり,感染が起きる場面と地域を絞り込むことで社会的影響とコストを限定化できる.https://www.stat.go.jp/data/chiri/map/c_koku/t-mitsu/index.html

6.重症者数は新規感染者数から約13日の遅れをもつので(下図の推定では16日遅れ),2週間先までの予測は容易であり,先回りした対策が可能である.2021726日の時点での重症者数は713日ころの新規感染者を反映している.また2021726日の新規感染者(既知)から予測した202188日(山の日)の東京都の重症者数はおよそ153名程度である(78×726日新規感染者週平均/713日新規感染者週平均).なお88日まで現在と同じ状況が続くと(13日間で新規感染者数が1.97倍),仮にそれ以降新規感染者が減少しても821日の重症者数はおよそ300名となる.

 

7.隔離効果(検査とクラスター対策)×社会的抑制効果(リモートワークなど)×集団免疫効果(回復者やワクチン)を必要な値に保ちながら,隔離コスト(感染者数に比例)+社会的抑制コスト(感染者数によらない)+集団免疫コストを小さくすることになるのかもしれない.総合的な対策も有効.上記の総合的な効果値が同じであっても,多くの感染者が存在する状態と,ほとんど感染者が存在しない状態があり得る(説明measure.pdf).隔離により対応できれば社会的抑制よりコスト効率が良く波及効果も含めて経済成長に寄与する可能性がある.感染者密度の管理目標を決めて合意しておくと良いと思われる(感染者密度の管理目標option.pdf).もし抵抗性の変異株などによりvaccinationによる集団免疫が十分でなければ,人工的な免疫の効果と社会的抑制や隔離を組み合わせて対応することになる.

 

8.ある感染者について自分が感染した場面と他者を感染させた場面(なし〜複数)の情報が同時に得られれば,世代を時間の単位として次元が感染場面×感染場面のprojection matrixを作成し(例:飲食店で感染した1名が平均して家庭内で○名,オフィスで○名感染させる),最大固有値のsensitivityとして経路の重要度を評価して合意形成に利用できるかもしれない.(個体群の行列モデル.経路不明は感染場面のひとつとしておき,仮定をおいてR0=最大固有値となるよう逆推定するか)

 

9.集団のvaccinationが進むと,変異株の中では抵抗性を持つものが相対的に有利になる.新しい変異株の増加率は,地域により環境が違うので,同時に同所に存在する他の株との比較によって測定される(Alpha株について神戸市kobe2021.pdf全国japan2021feb_march.pdf).世界中で網羅的な変異株のモニタリングを継続することが望ましい.

 ただし入院や死亡などで選択的に変異が除去されるため,特殊な状況を除いて重症化する方向の進化は考えにくい(例外は増殖パラメーターの増加と重症化がリンクして後者の負荷を打ち消すとき.感染しなかった層に感染するようになり,その層が重症化しやすい場合など.ウイルスの立場では感染しなかった層は身近な未利用資源).なお10才未満については,Omicron株ではそれ以前の株と比較して病原性が少し高くなった(https://covid19.mhlw.go.jp/).若齢者が感染しやすくなるため結果的にホスト密度が上昇し増加率も高くなる.

 

 

掲載日:2020215日,2022719日更新

 

計算方法: 

・現在行っている短期の予測は,個体群モデル(SIRモデル)に都道府県間の移動を組み込んだ状態空間モデルも利用しているsource_sink.pdf

・初期の分布拡大予測(すでに終了)は,これまで知られている外来生物の分布拡大パターンの中から初期の分布拡大パターンが新型コロナウイルス感染症に類似した種を抽出し,これを合成することで予測を行った.外来種に加えて初発国からの訪問者数(逆順)(日本政府観光局https://statistics.jnto.go.jp/graph/#graph--inbound--prefecture--ranking)と都道府県人口(逆順)も教師データとして投入した.
・計算には「みんなでGISの応用プログラム「外来生物侵入順序解析」を使用した.詳細や信頼性の評価はKoike & Morimoto 2018参照.

予測計算,種特性の記載,概況,注意・警戒事項の記載者:  小池文人(横浜国大),既分布の外来生物の分布拡大データは森本信生(畜産草地研究所),および昆虫情報処理研究会のゴケグモ類の情報センター,厚生労働省による過去の新型インフルエンザ情報(過去のまとめ検証用),環境省のヒアリに関する諸情報について,農林水産省のCSF感染野生イノシシの発見地点などによる.COVID−19の感染者数の情報は各都道府県ホームページのほか朝日新聞日経新聞の集計による.

 

 

文献:

Koike, F. and Morimoto, N. 2018. Supervised forecasting of the range expansion of novel non-indigenous organisms: alien pest organisms and the 2009 H1N1 flu pandemic. Global Ecology and Biogeography 27:991–1000. https://doi.org/10.1111/geb.12754

 

 

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