コモチカワツボ調査ガイド

200874

浦部美佐子(滋賀県立大学)

 

(1)コモチカワツボの見分け方

コモチカワツボ(New Zealand mud snail, Potamopyrgus antipodarum)は最大4〜5ミリの小さな巻貝で,在来のカワニナの稚貝と似ていますが,殻口の形の違いで見分けることができます.

 

 

(2)コモチカワツボの見つけ方

多い時には,水底が黒ゴマをまいたように見えます.

 

少ない時は,糸状藻やミズゴケ・水草などについたり、浅瀬の石の裏面にいますので,そういうところを探してください.

 とても小さいので年配の方には肉眼で見えにくいかと思われますが,糸状藻を手に取ったり、水底の石の表面を手で触ると砂粒のようなものがざらついてきます.虫眼鏡などを使うと小さな巻貝の形をしていることがわかります.

 

(3)コモチカワツボが多い場所

 水が透き通って雨の日にもあまり濁らない川や,湧き水のまわり,水草や糸状の藻類が多い場所などに見られます.水底の砂がいつも動いているような場所や,いつも水が濁っているようなところ,浮いた泥が多いところ,などにはあまりいません.水草や糸状藻類があればかなりの急流にもいます.また水が透き通っていれば池や湖の底の石の上などにいることもあります.やや低めの水温を好むようですが,日本国内であればどこでも生息可能です.マスの養魚場やホタルの観光名所の近くで見られることもあります.

 

(4)長靴・網の消毒方法

川から上がったら消毒を行います

1.靴底の泥やゴミ,生物をできるだけ手でとります.

2.10%オスバン液(逆性石鹸,塩化ベンザルコニウム10%含有の市販オスバン液を10倍に薄めて使用)を入れたバケツなどに浸すか,十分にスプレーして5分以上放置します.

3.次の調査に使う前に,できれば水道水で洗い流します.

 

オスバン液は,カエルツボカビ防除にも有効です.入手できなければ,10%液体せっけん(洗濯用・台所用)で同様に消毒してください.

 

 

(5)分布をひろげないために

l  無性生殖を行うので1匹持ち込まれれば増殖してしまいます.

l  生息地の川での遊びや魚釣りで使った網やバケツ,履物,などに付いて運ばれることが予想されます.生息地の川で遊んだら,次に使う前に道具を十分乾燥するか消毒をしましょう.湿気が残る状態では、水がなくても1ヶ月以上生きていることがあります

l  生息地の水草や川底の石を家庭の観賞用の水槽に持ち込むと,水槽内で増殖したり,排水を通して下流に広がる可能性があります.

l  マス類やウナギ類などはコモチカワツボを食べても消化できないので,排泄物に混じって分布をひろげます.生息地の川の魚を持ち出したり,他の川に放流すると人為的に分布が広がる可能性があります.

l  上記のように,魚類によって上流に向かって自然に分布をひろげる可能性があるほか,水鳥の足に着くなどで自然に運ばれる可能性もあります.

 

どこが注意すべき生息地であるのかについては,このホームページでお知らせしてゆく予定です.

 

 

(6)生態系への影響

日本にはこのように大発生する微細な巻貝はいませんでした.石や水草の上に着いた藻類をなめて食べますが,数が多いために川の光合成の大部分を食べてしまうなど,生態系に大きな影響を与えます.ヒラタカゲロウ類やカワニナ,藻類を食べるころのアユ,などともエサが競合しそうですが,野外でのこのような影響については未だ研究途上です.

 天敵としては,原産地の淡水ハゼ類には消化できるものがいるそうですが,日本のハゼ類やコイ科魚類についての消化の可否は不明です.また、原産地ではニュージーランドザリガニが本種をよく食べることが知られています。

 

 

 

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