都市の自然を楽しむライフスタイル

横浜国大キャンパスの里山2018

 

キャンパス内の里山のササ刈りと竹伐りをしました

 

参加:学部生7名,大学院生2名,大学教員1

2018128() 10:00~16:00

 

 

勉強会

里山とは何か.里山の歴史.横浜国大キャンパスの里山

 

 

メモ

横浜国大キャンパスは風致地区(緑豊かな生活環境が形成されることをめざし、都市の風致を維持するため定める地区)に指定されています.地域の樹林が減少しないようにするため,木竹を伐採する場合は補植計画を示して許可をうける必要がありますが,横浜市の担当課と相談して多様性の高い里山落葉樹林の保全作業として雑木林に侵入した竹の伐採を行っています.

 

 

 

里山について

 

里山の定義はいろいろある

1.民家の近くにあって頻繁に利用される森林. 里山vs.奥山
2.持続可能な里山農業システムが行われていた地域全体.草地や耕地,樹林を含む景観(今回)

 

樹林と草地(萌芽含む)と耕地の空間的な配置は,地域の地形や文化によっていろいろある

 

 

 

 

雑木林は人間の伝統的な利用によって作られた生物多様性の高い生態系.里山,雑木林,と言いながら,里山の多様性の主役は意外に草原の生物.燃料用の雑木林は低林,建材用は高林.

 

 

 

世界の里山(広義)

本来は森林地域であったが,近世やそれ以前の持続可能なバイオマス利用システムで形成され,伝統的な土地利用に対応した特有の生物相を持つ半自然生態系.

ヨーロッパのヒース (Heather)

もとは針葉樹林や落葉樹林.家畜の放牧で草原化.貧栄養な土壌ができてツツジ科の低木が多い特殊な植生.放置されて森林にもどりつつあるが侵入したマツの伐採などの保全活動も盛ん.散歩(ハイキング,ツアー)に利用.

 

ヨーロッパの半自然草地 (Semi-natural grassland)

もとは針葉樹林や落葉樹林.家畜の放牧(pasture)・採草(meadow)で草原化.貧栄養な土壌で草本植物の多様性が高い.人間の影響がなくても草地的だった石灰岩草地もある.

 

北アメリカのOak savanna

もとは落葉樹林(ナラ類,サクラ類など).ネイティブ・アメリカンのひとたちの狩猟のための火入れで草地と疎林がまじった景観になった.ただし自然の落雷による発火もある.乾燥・貧栄養で草地生物の多様性は極めて高い.火入れなどの保全活動が行われているが,放置すると樹林化が進行.今もハンティングに利用される.

 

 

里山の歴史

 

 

近世の歴史の影響が現在の生物の分布に残る例

鳥取県大山のブナ(Ohtani & Koike 2005),房総半島の北限の常緑樹(Luisほか 2010),ヨーロッパの半自然草原の植物(Cousins & Lindborg 2008)など.保全のためには歴史を知る必要がある.

 

 

 

横浜国大キャンパスの里山

 

コース間の疎林や,ゴルフ場外縁の樹林には

里山の生態系が残る(Yasuda and Koike 2006

 

 

 

横浜国大北門の里山樹林の生物

 

ヤマユリ(草本)  2018719

栽培されているオリエンタルリリーの原種のひとつ.採集禁止

タチツボスミレ(草本)2018327

雑木林などに多い

 

ウグイスカグラ(低木)2018327

ハスカップの仲間で果実は食べられる

モミジイチゴ(低木)2018327

キイチゴの仲間で果実は食べられる

 

ガマズミ(低木)2018817

果実は食べられる

シオデ(草本)201876

横浜国大キャンパスではここだけ.採集禁止

 

 

 

萌芽で維持される里山の低木類は,開墾などでいったん失われると,その後に樹林が回復しても欠落することが知られている(Kobayashi & Koike 2010)

 

タヌキの痕跡もある

 

 

2000年頃はこの場所にあったが

最近は見かけない植物

かつてのようす  200547

 

 

Cousins, S.A.O. and Lindborg, R. 2008. Remnant grassland habitats as source communities for plant diversification in agricultural landscapes. Biological Conservation 141: 233-240. https://doi.org/10.1016/j.biocon.2007.09.016

Kobayashi, Y. and Koike, F. 2010. Separating the effects of land-use history and topography on the distribution of woody plant populations in a traditional rural landscape in Japan. Landscape and Urban Planning 95: 34-45. https://doi.org/10.1016/j.landurbplan.2009.11.003

Ohtani, S. and Koike, F. 2005. Implications of 19th-century landscape patterns for the recovery of Fagus crenata forests. Applied Vegetation Science 8: 125-132. https://doi.org/10.1111/j.1654-109X.2005.tb00637.x

Vega, L., Koike, F. and Suzuki, M. 2010. Conservation study of Myrsine seguinii in Japan: Current distribution explained by past land use and prediction of distribution by land use planning simulation. Ecological Research 25: 1091-1099. https://doi.org/10.1007/s11284-010-0734-y

Yasuda, M. and Koike, F. 2006. Do golf courses provide a refuge for flora and fauna in Japanese urban landscapes? Landscape and Urban Planning 75: 58-68. https://doi.org/10.1016/j.landurbplan.2004.12.004