セアカゴケグモ

 

 

英名:  Redback spider

学名: Latrodectus hasseltii

原産地:  オーストラリア

 

原産地での生態

 人家周辺などの乾燥した環境に多い.温度耐性は0度から40度まで(適温2237度).3ヶ月(オス)から4ヶ月(メス)で成体となる.オスの寿命は半年ほどだがメスの寿命は23年.いったん交尾すると2年程度は単独で産卵できる.自然の分布拡大のほかに,貨物や自動車などで運ばれる.幼体が糸を使って風で飛ぶバルーニング分散はあまり行わないといわれる.

神経毒を持ちヒトの死亡例は極めて稀だが痛みが長引く(Latrodectism).原産地のオーストラリアでは抗毒素の利用が最も多い咬傷で,ハビタットが就学前の子どもの活動域と重なるため幼児の被害が多い.同様のハビタットで活動する飼いネコに対する咬傷では,ネコが死亡するケースもあるとのこと.

 

情報源

昆虫情報処理研究会 ゴケグモ類の情報センター

国立科学博物館ホットニュース

Wikipedia: Redback spider Latrodectism(英語)

 

 

将来予測

 

 

色の濃いところで早くから侵入する.

 

乾燥して温暖な気候を好むとされるが,この予測では気候的な分布の限界を考慮していない.温度耐性から分布域は照葉樹林域以南に限られる可能性があるが,日本海側にも分布可能かは不明.

 

都道府県において発見される予測時期の誤差(標準偏差)は61ヶ月.

 

全体的な分布拡大速度は比較的遅い.物資に付着して運ばれるが,これによる遠距離の飛び火的な分布拡大と,自然の分布拡大とを行う.

 

 

 

都道府県

20133月現在の分布

発見時期の予測

予測の幅

 

(予測±標準偏差)

北海道

未分布

2032

2026

2038

青森

未分布

2033

2027

2039

岩手

未分布2013624日)

2027

2021

2033

宮城

201194

2019

2012

2025

秋田

未分布

2030

2024

2036

山形

未分布

2027

2021

2033

福島

未分布201393日)

2020

2014

2026

茨城

2013123

2019

2013

2025

栃木

未分布

2021

2015

2027

群馬

2005816

2017

2011

2023

埼玉

未分布2014729日)

2017

2011

2023

千葉

未分布201392日)

2012

2006

2018

東京

未分布2014924日)

2014

2008

2020

神奈川

2012920

2010

2004

2016

山梨

未分布

2021

2015

2027

長野

未分布

2020

2014

2026

静岡

未分布2013926日)

2009

2003

2015

新潟

未分布

2025

2019

2031

富山

未分布

2020

2014

2026

石川

未分布2014719日)

2021

2015

2027

福井

未分布2014725日)

2015

2009

2021

岐阜

200869

2010

2004

2016

愛知

2005819

2006

1999

2012

三重

19951127

2007

2000

2013

滋賀

20051019

2005

1998

2011

京都

20051010

2002

1996

2008

大阪

19951211

2001

1995

2007

兵庫

1997930

1997

1991

2003

奈良

200383

2003

1997

2009

和歌山

1996115

2003

1997

2009

鳥取

未分布201396日)

2011

2005

2017

島根

未分布

2011

2005

2017

岡山

2008425

2002

1996

2008

広島

2012911

2004

1998

2010

山口

2005415

2004

1998

2010

徳島

2010718

2001

1995

2008

香川

2009916

2000

1994

2006

愛媛

未分布2014125日)

2006

2000

2012

高知

2011922

2007

2001

2013

福岡

20071030

2001

1995

2007

佐賀

2010224

2004

1998

2010

長崎

未分布

2010

2004

2016

熊本

未分布2013817日)

2008

2002

2014

大分

未分布

2006

2000

2012

宮崎

2009623

2010

2004

2016

鹿児島

2008815

2004

1998

2010

沖縄

1995126

2002

1995

2008

(括弧内は予測後に発見されたもの.2014927日現在)

 

 

 

概 況

 

l  現在は西日本に多い.愛知県から大阪府にかけての地域と(岐阜,愛知,三重,滋賀,京都,大阪,兵庫,奈良),香川県,福岡県で広く蔓延している.

l  神奈川県など関東でも発見され始めている.都道府県レベルで初めての個体群が発見されていても,面的に分布するまでには時間がかかる.

l  全体的な分布拡大速度は,比較的ゆっくりしている.

 

 

注意・警戒すべきこと

 

l  分布拡大が遅いため,個体群の制御が比較的容易である可能性がある.いま分布拡大中の地域では,早期発見・早期防除により飛び火状に侵入した個体群を根絶させ,分布拡大を大幅に遅らせることが可能となる可能性がある.

l  分布拡大の予測から,愛媛県や大分県では,今すぐに発見されても不思議ではない.
 静岡県,千葉県,長崎県,熊本県でも今後数年以内に発見される可能性が高い. 鳥取県,島根県でも気候が生息可能な範囲内であれば,数年以内に発見される可能性が高い.
(予測後に静岡県,千葉県,熊本県,鳥取県,愛媛県で発見された.20131224日現在)
 今後15年以内に照葉樹林域の太平洋・瀬戸内側の全ての県で発見される可能性が高い.面的に分布可能な北限については検討が必要である.

 

掲載日:2012315日,2014927日追加情報

分布データ: 昆虫情報処理研究会 ゴケグモ類の情報センター

Vink C., Derraik JGB, Phillips CB, Sirvid PJ. 2011. The invasive Australian redback spider, Latrodectus hasseltii Thorell 1870 (Araneae: Theridiidae): current and potential distributions, and likely impacts. Biological Invasions 13: 1003-1019

 

 

計算方法: 

・付着して運ばれる物資の流れがわからないため,これまで知られている外来生物の分布拡大パターンの中から初期の分布拡大パターンが類似した種を抽出し,これを合成することで予測を行った.
・計算には「みんなでGISを使用した.

予測計算,種特性の記載,概況,注意・警戒事項の記載者:  小池文人(横浜国大),害虫データベースからのデータ抽出: 森本信生(畜産草地研究所)

 

 

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