一本梯子を使った木登り

「一本梯子」「つなぎ梯子」などと呼ばれる,林業で枝打ちなどの目的に用いられる梯子を使った木登りの様子についてごく簡単に紹介します.ただし,これは「研究用」の木登り方法です.どんな方法であっても木に登ることは危険を伴う行為でり,「絶対に安全な」木登り方法というものはありません.ここで紹介する方法はあくまでも参考と考えてください.ここで紹介した方法によって事故等が起こっても,当方は一切責任を持ちません.事故等については木登りをする研究者個人が責任を負う覚悟で作業を行ってください.

(隅田明洋:岐阜大学 農学部 森林生態学研究室 // e-mail asumida@cc.gifu-u.ac.jp)

 

 

一本梯子

私が用いている一本梯子は,商品名「ロッキーラダー1」(巴化成工業株式会社,東大阪市,Tel 0729-62-3151)と呼ばれるアルミパイプ製の育林作業用の梯子です.左の図は,樹高約15mのアラカシにとりつけた一本梯子です.梯子先端部は樹冠上に出ています。梯子を購入する際 3 本( 6 m分)がワンセットになっており,それよりも高く登る必要がある場合には,延長管と呼ばれる継ぎ足し用梯子(1本 2 m)を購入し,必要な数だけ継ぎ足します.ただし,長さ6 m,加重85kg を越えて梯子を使用する際の事故については,メーカー側は一切保証しません.

一本梯子は、ロープできつく幹に縛って固定します。

 

 

木登りのための装備

 

 

 

 

少しでも安全に木に登るための最低の装備として,登山用のハーネスを用います.ハーネスに結びつけた登山用ロープ(右手)の先に,カラビナと呼ばれる金属製の金具がとりつけてあります.ハーネスにもカラビナがとりつけてあります.木に登ったとき,この登山用ロープを幹に巻き付け二つのカラビナどうしを接続して,万一の落下等に備えます.

 

 

針葉樹の木登り

 

 

 

針葉樹のように幹がまっすぐで鉛直な場合,樹冠下部の枝の無い所までなら比較的簡単に一本梯子を掛けることができます.この写真は,北海道のアカエゾマツの樹冠下(地上高20m)まで一本梯子をかけた様子です.この写真の梯子は,冒頭のアラカシの写真の梯子とタイプが違っており,ステップが左右交互についています.

 

 

 

このアカエゾマツの場合、たくさんの枝が幹から密に出ていたため、樹冠内に梯子をかけることが困難でした。しかし、枝の強度が十分であったため、梯子の先端部(矢印)より上では、枝をステップにした「素登り」で樹冠上部まで到達することが可能でした。

 

 

広葉樹の木登り

 

 

 

広葉樹のように幹が多少蛇行していても、一本梯子を取り付けることができる場合があります。この写真は、ホオノキに立てかけた一本梯子の例です。ただし、このような場合、より安全性に配慮する必要があります。

 

このホオノキに上ったときの景色(地上高約12m)です。矢印は花です。

 

下の写真は、樹冠部から見下ろしたところ。

 

 

 

 

 

 

針葉樹でも広葉樹でも、樹冠上部まで登る場合にはそれなりの安全確保が必要です。下の写真では、ホオノキの樹冠上(地上高約12m)で枝等を切りおろす作業をした際、3本の「補助ロープ」(赤い矢印に平行)で幹の揺れを止めています。ハーネスで身体を固定しているので、両手両足を離しても大丈夫です。

 

以上、一本梯子を使った木登りの様子を紹介しました。詳しい方法については日本生態学会和文誌に紹介の予定です。